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シリーズ「授業」(令和5年度)

よりよい生活を創り 未来をともに生き抜く 子供の育成

京都府小学校家庭科教育研究会 福知山市立惇明小学校
教諭 中島 綾子

Ⅰ.研究主題設定の理由

 児童は家庭と地域で、さまざまな人との関わりの経験を経て成長してきている。それは、家庭科の学習の基盤となる、人と関わり合いながらよりよい生活を創り出す力につながっていくはずである。家庭科教育の充実を図るとともに、これからの家庭・地域と関わる機会を見直し、整理・充実させることで、よりよい生活を創り出す児童を育成することをねらって、本主題を設定した。

Ⅱ.目指す子供の姿

日常生活に活用できる知識及び技能を身に付けている子供
問題を見いだして課題を設定し、解決方法を考え、考えたことを表現できる子供
家庭や地域に関わりながら生活をよりよくしようと実践していく子供

Ⅲ.授業実践

1.題材名 第5学年(全4時間)

「我が家☆HAPPY☆プロジェクト」
A(4)「家族・家庭生活についての課題と実践」

2.題材について

 本題材は、「A家族・家庭生活」の(2)「家庭生活と仕事」の学習を生かして、「B衣食住の生活」の「食生活」で学習した内容との関連を図り、日常生活の中から問題を見いだして課題を設定し、計画、実践、評価・改善、実践報告を通して、課題を解決する力と生活をよりよくしようと工夫する実践的な態度を養うことをねらいとしている。題材を通して、これまでの学習を生かして「協力」の視点を働かせながら、日常生活の中から問題を見いだし、家族の一員として、家庭に役立つことを考える力を育んでいく。

3.題材の目標
家庭の仕事について日常生活の中から問題を見いだして課題を設定し、様々な解決方法を考え、「お料理大作戦」の計画を立てて実践した結果を、評価・改善し、考えたことを表現するなどして課題を解決する力を身に付けている。【思考・判断・表現】
家族の一員として、生活をよりよくしようと、「お料理大作戦」での家庭の仕事について、課題の解決に向けて主体的に取り組んだり、振り返って改善したりして、生活を工夫し、実践しようとしている。【主体的に学習に取り組む態度】
4.研究の視点と内容
【視点1】指導計画の工夫

 5年生という発達段階を踏まえ、取り組む内容を食生活に絞り、冬休みを活用して実践するために、2学期の後半に計画を立て、1月に実践を評価・改善して新たな課題を見つけることができるようにした。また、今回の実践を生かし、A(3)「家族や地域の人々との関わり」における「地域の人々との関わり」の学習を基礎としたA(4)の実践を6年生の2学期に設定し、系統的に生活をよりよくしようと工夫する力を高められるようにした。

【視点2】学習指導の工夫
主体的な学びを目指して~課題設定~
リサーチシートを活用し、自分の家庭を具体的にイメージすることで、児童にとって必然性のある解決すべき課題が設定できるようにした。このことから主体的に学びに向かう態度を育むことができた。
対話的な学びの中で~実践計画~
実践計画を立てる際には、生活の営みに係る見方・考え方を働かせ、友達との交流の時間や家庭でアドバイスをもらう機会を意図的に設定することで、他者のアドバイスや工夫を自分の実践に生かせるようにし、対話的な学びの中で、児童の思考が広がったり深まったりした。
深い学びにするために~実践の評価・改善~
リサーチシートで調べてきた各家庭の様子について交流する中で、家族はさまざまな工夫をしていることに気付かせ、その理由について話し合う時間を設けた。その中で「家族のために」と考える視点の大切さに気付くことができ、「協力」という見方・考え方を働かせることにつながった。
【視点3】学習評価の工夫
学習シートの工夫
学習の記録は、児童にとって見通しをもちやすいリーフレット形式とし、問題発見から課題解決の流れを一目で確認できるようにすることで、児童の変容が評価しやすくなる工夫を行った。
評価規準の明確化
具体的な児童の姿をあげて評価規準を明確にしてから実践を行うようにした。指導計画に指導に活かす評価と記録に残す評価の場面を設定することで、授業中に適切な評価を行うことができ、指導方法の改善にもつながった。また、「努力を要する」状況(C)と判断される児童に対しての支援も予め考えておくことで、個に応じた指導を充実させることができた。
【視点4】家庭・地域との連携

題材指導計画に家庭との連携を位置づけ、家庭の思いや願いが学習過程の中で反映されるようにした。家庭から協力を得やすいように、通信等を使って啓発を行った。実践後に家族からも評価を受けられるようにしたことで、児童の自己肯定感の向上や実践意欲を高めることにつながった。

5.成果と課題
児童は、リサーチシートの結果を交流する中で、家庭の仕事や工夫の様子がそれぞれの家庭の状況によって異なることを実感し、より「我が家」を意識して課題設定に向かうことができた。
グループで、実践計画について話し合う時間を設定したことで、自分だけでは気付かなかった視点や工夫の仕方を知ることにつながり、よりよい実践計画を立てることができた。
1人1台端末を活用して、実践を記録したり交流したりしたことで、より具体的に実践を評価・改善することにつながった。
それぞれ家庭の実態に配慮しつつも、全ての児童に必要な資質・能力を身につけさせるための方策を事前に検討・確認しておく必要がある。
本題材の学びが児童の日常生活の中で役立つように、題材終了後も取組を継続させていく仕組みを考える必要がある。