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シリーズ「授業」(令和2年度)

広げよう かかわり、求めよう よりよい生活
~家庭・地域との関わりを広げながら自分の成長を実感し、よりよい生活を目指す子供~

岩手県小学校家庭科教育研究会 盛岡市立仁王小学校 教諭 瀬川 幸恵
盛岡市立城南小学校 教諭 中村 さやか

Ⅰ.研究主題設定の理由

 「広げよう かかわり」とは、家族との関わりを深めることや地域で共に生活している異なる世代の人々へ関わりを広げていくこと、「求めよう よりよい生活」とは、自分のいだいた思いや願いを実現しようと実践を重ね、生活に主体的に働きかけていくことととらえている。家庭や地域との関わりを広げることによって、「してもらう自分」から「できる自分」へ自分の成長を実感し、自信をもってよりよい生活を目指していく子供を育てたいと考え、本主題を設定した。

Ⅱ.目指す子供の姿

学習したことを身近な生活に活用できる子供
日常生活に必要な知識及び技能を身に付けている子供
家庭生活や自分の成長に思いや願いをいだく子供

Ⅲ.授業実践

1.題材名 第6学年(全4時間)

「生活時間をマネジメント」A(2)家庭生活と仕事

2.児童の実態

 これまでの家庭科の学習を通じて、学びの価値を感じたり、見方・考え方を働かせて生活の中から問題を見つけて課題を設定したり学習を振り返ったりすることができるようになってきた一方で、家族の一員として協力することへの関心は低く、家族や地域の人々と関わることや家庭での実践は、十分ではない。

3.題材の目標
家庭には、家庭生活を支える仕事があり、互いに協力し分担する必要があることや生活時間の有効な使い方について理解する。【知識及び技能】
家庭の仕事について問題を見いだして課題を設定し、様々な解決方法を考え、実践を評価・改善し、考えたことを表現するなどして課題を解決する力を身に付ける。【思考力、判断力、表現力等】
家族の一員として、生活をよりよくしようと、家庭生活と仕事について、課題の解決に向けて主体的に取り組んだり、振り返って改善したりして、生活を工夫し、実践しようとする。【学びに向かう力、人間性等】
4.研究の視点と内容

「い・わ・て・い・い・生活」を合言葉に、【いだく・わかる・できる・いかす・いきる】を視点として設定し研究を進めてきた。

【視点1】家庭生活や自分の成長に思いや願いをいだかせる工夫【いだく】
家庭生活を見つめさせる工夫
題材前半に、(1)自分の生活時間を表にまとめて可視化する活動、(2)「ある母親の一日の生活時間」と自分の生活時間を比較する活動を位置付けることで、児童が生活を見つめ直し、自分の生活の課題に気付くことができるようにした。
【視点2】日常生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技能を身に付けさせる工夫【わかる・できる】
実践的・体験的な活動の位置付け
第1時に自分の一日の生活を表にまとめ、生活時間について話し合う体験的な活動、 第2時に前時で気付いた「家族に関わる時間」について、「家族の協力」の視点で見直すこととし、「ある母親の一日の生活時間」を示し、自分の生活時間と比較する活動を取り入れた。
言語活動の充実
上記活動では、(1)「家族の協力」という視点(2)客観的な資料の提示(3)思考を深める補助発問に留意した。
【視点3】学習したことを身近な生活に活用させる工夫【いかす・いきる】
家庭での実践・連携の在り方を明確化したカリキュラムデザイン
家族の一員として実践する喜びやできるようになった自分を自覚させるために、身に付けた力を使って、繰り返し家庭実践を行うカリキュラムをデザインした。
家庭実践の評価・改善
実践カードには、自分の課題・目指す姿、具体的な計画と毎日の振り返りを左側に、実践成果と課題、家族からのコメント、交流会での友達からのアドバイスを右側に位置付け、課題解決に向けた実践や思考の変化を評価したり、今後のグループ分けの参考に用いたりした。交流後に生活時間の使い方や仕事を見直し、改善策を検討した。改善・修正を行った2回目の家庭実践の計画を立て、実践を行うようにした。

Ⅳ.研究のまとめと考察

生活の課題を実感できるような工夫をすることにより家庭実践につながる思いや願いをいだかせることができた。
「家族の協力」という視点で考え、客観的な資料を用いて比較することにより家庭生活を支える仕事や分担の必要性、生活時間の有効な使い方について考えを深めることができた。
庭や学びのつながりを明確にしたカリキュラムデザインを行うことで、家庭との連携を図りながら家庭実践を計画的に行うことができた。
よりよい生活を求めるための「実践を評価・改善する場」における対話のさせ方を明らかにする必要がある。