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シリーズ「授業」(令和4年度)

家庭や地域の人々と関わりながら、生活をよりよくしようと工夫する子供の育成

熊本県小学校家庭科教育研究会 阿蘇郡西原村立山西小学校
教諭 野上 晶代

Ⅰ.研究主題設定の理由

 日常生活での衣食住の営みや消費・環境を見つめ直し、どのような状況においても、家族や地域の人々と関わりながら、生活をより良くしようと工夫する子供の育成はこれからを生きる子供たちや我々にとって大変重要な事だと考え、本主題を設定した。

Ⅱ.目指す子供の姿

日常生活に活用できる知識及び技能を身に付けている子供
生活の課題を見いだし、協働的に解決を図る子供
家庭や地域の人々との関わりを考え、よりよい生活を実現しようとする子供

Ⅲ.授業実践

1.題材名 第5学年(全6時間)

「持続可能な暮らしへ 物やお金の使い方」
C(1)「物や金銭の使い方と買い物」
 (2)「環境に配慮した生活」

2.題材について

 本題材では「持続可能な社会の構築」を目指して、資源や環境を大切にするよりよい生活の仕方を身につけるために、物や金銭の使い方と買い物の仕方や留意点について考えることで具体的な行動につなげることをねらいとしている。題材を通して、物やお金の使い方を理解して、消費者として目的に合った買い物ができるようにするとともに、「持続可能な社会の構築」という見方・考え方で、身近な消費生活と環境について考えていく。

3.題材の目標
物や金銭の使い方と買い物や環境に配慮した生活について理解しているとともに、購入に必要な情報の収集・整理が適切にできる。【知識・技能】
物や金銭の使い方と買い物や環境に配慮した生活について問題を見いだして課題を設定し、様々な解決法を考え、実践を評価・改善し、考えたことを表現するなどして課題を解決する力を身につけている。【思考・判断・表現】
家族の一員として、生活をよりよくしようと物や金銭の使い方と買い物や環境に配慮した生活について、課題の解決に向けて主体的に取り組んだり、振り返って改善したりして、生活を工夫し、実践しようとしている。【主体的に学習に取り組む態度】
4.研究の視点と内容
【視点1】知識及び技能の確かな習得を図る教育課程の工夫

 算数科や社会科との関わりを持たせたことで、家庭科で得た知識を他教科で生かしたり、他教科で得た知識を家庭科で生かしたりすることができ、児童の学びがより深いものになった。また、学習で得た知識を、生活に生かそうとする主体的な態度を育むことができた。

【視点2】問題解決学習の充実を図る学習指導の工夫
劇化による問題解決的な学習過程
(1)買い物場面における児童の失敗や後悔したことを劇化して児童に示すことで、児童の興味・関心を高めるとともに、主体的に学びに向かう姿が見られた。
(2)劇化することで、児童の日常生活に深く関わる場面を授業で扱うことができ、児童が生活経験に基づいた意見を意欲的に発表することができた。そのため、話し合い活動を通して、自分の考えを深めることができた。児童たちも関心をもって劇を見る姿があり、「洋服のサイズが小さい」「買い物失敗だ。」など気づきをつぶやく児童もいた。
学びを深めるための対話的な活動(言語活動の充実)
(1)個人で考えた後に、グループで話し合い活動を行ったことで、根拠をもとに考えをまとめることができていた。
(2)グループ毎に発表をし、自分たちのグループと類似している考えやグループにはなかった考えも共有することができ、適切な買い物の仕方を考えることができた。
ICTの効果的な活用
ICTを用いて、本時において身につけさせたい知識を児童に分かりやすく提示することができた。また、学習課題を電子黒板に提示することで、児童がきちんと課題を捉え、課題に対する自分の考えをもつことができるようになった。
【視点3】自分の成長を自覚し、資質・能力を育む学習評価の工夫
アンケートに基づいた学習評価の工夫
事前のアンケートに基づいて学習課題を設定し、児童の日常生活における失敗や後悔を基に学習を進めたため、授業を通して、児童に自分の成長を感じさせることができた。
学習シートの工夫
学習シートに、劇のシナリオを載せ、シナリオに沿って、児童がアドバイスを書き込む形にしたり、授業の振り返りを毎時間書かせたりすることで、学習を通して習得した「知識・技能」だけでなく、児童の「思考力・判断力・表現力等」を評価する際に、活用することができた。
5.成果と課題
他教科と関連付けたことで、本単元で学習する内容を教科横断的に捉えることができ、児童の深い学びにつながった。
アンケートを基に学習課題を設定したことで、児童の生活経験に即した学習を進めることができた。そのため、児童が主体的に学習に取り組むことができた。
本時の課題を劇化して示すことで、児童に日常の買い物場面を想起させることができ、学習に主体的に取り組ませるとともに、深い学びにつなげることができた。
グループでの話し合い活動を行うことで、児童が自分の考えの根拠を明確にすることができた。また、様々な角度から課題について考えることができた。
ICTを活用したことで、本時で身につけさせたい知識を確実に押さえるとともに、課題を共有して協働的な学びにつなげることができた。
題材間、他教科等、行事や地域の人材・学習材を有機的に関連付けるカリキュラムマネジメントにさらに取り組む。
家庭では収入と支出のバランスを考えて、計画的に金銭の出し入れが必要であるため、自分だけの都合ではなく家庭全体の必要性を考えて購入計画を立てることが大切であることを十分、認識させていく必要がある。
単元のゴールを意識して毎時間授業を行ったが、「持続可能な暮らし」の視点を児童たちには十分定着させることができなかった。今後も継続して、様々な教科の学習において、繰り返し指導をしていく必要がある。